山の問題を解決するにはまちの人に山や木のことを知ってもらうのが大切

    INDEX
  1. 「山林の荒廃をなんとかしたい」と林業を志し、曽爾村へ
  2. 放置林の解消に役立ち山がきれいになるとうれしい
  3. 山岳ガイドや林業体験など個人でも活動中
  4. 自然のなかに身を置きながら、曽爾で暮らしていきたい

「山林の荒廃をなんとかしたい」と
林業を志し、曽爾村へ

スノーボードやサーフィンが好きで、DIYや料理も得意だという多才な林さんは、神奈川県に生まれ、神奈川県と奈良県で育ちました。子どもの頃から自然に親しみ、環境保全に興味を持っていたため、大学卒業後は大阪で建築部材の営業職に就きます。しかしその建築業界では、林業に関わる山側の人々と家を建てる施主などの一般消費者との間にある大きな隔たりを感じたそうです。「それによって引き起こされている山林の荒廃をなんとかしたいという気持ちがだんだん強くなっていきました。環境問題への意識、山が好きだという思いもあって、林業を志したんです」。退職後、曽爾村の地域おこし協力隊の林業担当として採用され、2016年4月に村へ移住しました。

放置林の解消に役立ち
山がきれいになるとうれしい

林さんが所属しているのは、曽爾村森林組合。間伐事業、市売り(市で木を並べる、出荷準備、販売管理、村への報告など)、造林補助金申請などの代理、観光事業など、幅広い業務を担当しています。従事者に若い人が少ないという林業界の課題は、曽爾村においても同様で、3年目の林さんは中堅として活躍中です。「所有者が手入れをしなくなった放置林の解消に役立てるとうれしいです。所有者を聞き回って探し、判明して了解を得られれば手入れが進められます。必要なことですし、山がきれいになっていきますから」。また、休日や森林組合の仕事後には、曽爾村農林業公社の仕事も行っています。曽爾村にはかつて7つの製材所がありましたが、林業の低迷と共にすべてが閉鎖されました。そこでもう一度林業を活気づけるため、曽爾村農林業公社が簡易製材機を導入したのです。「村内での木材利用の循環を生み出したり、オンリーワンの方向性で木材を村外に出したりするとき、製材機能が必要です。スギやヒノキを挽いたり、注文に応じた製材を行ったりしています。カヤ、ケヤキなどの広葉樹も挽けますよ。挽いたら見えてくる木材の表情がおもしろいです」。さらに、薪ストーブや薪の販売事業も行っています。

山岳ガイドや林業体験など
個人でも活動中

そうした仕事のほかに、多岐にわたる個人活動も行っています。「森林組合で仕事をさせていただいているからこそ、地元の方に個人的な仕事をいただいたり、相談を受けたりしています」。また、林さんは山岳ガイドの資格を取得しているため、「大和高原トレッキング&ネイチャーガイド協会」から依頼を受けてツアーを行い、さらに体験型の林業学習プログラム「林縁(りんね)くらす」も自ら企画・主催しています。「山の問題を解決するには、木に価値を感じてもらうこと、木を使うことでどんな表現ができるのか知ってもらうこと、山に人を惹き込むことが大事だと考えています。そのためにまず、まちの人に山を知ってもらい、山の人にもまちの人の気持ちをわかってもらうことが重要だと思うんです」。

自然のなかに身を置きながら、
曽爾で暮らしていきたい

現在、林さんはさらに活動の幅を広げるために「森林インストラクター」の勉強中で、「森林環境教育指導者養成講座」の受講しています。そうすることで、自然の家での子ども向けの体験教室ができるようになります。「村で学び、親しみながら、今後の生き方を模索しています。仕事や個人活動以外では、村で約300年の歴史をもつ獅子舞をはじめ、体育協会や消防団にも参加しています。地域の方から『林くんもうまいこと溶け込んでくれて』と言われてうれしかったです。
早朝から自宅に人が訪ねてきたり、泊まりにきたり、近所の人と花見をしたり、自宅が人の集まる場になっていることも楽しいです」。村の人々と協力しながら地域に根を下ろしている林さんの存在は、村にとっても心強いことでしょう。林さんは今後も曽爾村に住み続けながら、自然に携わっていきたいといいます。「自宅にある薪ストーブでは、村から出た薪を使っています。木を育てて伐って、森が健やかに育つお手伝いをして、自然と共生する。人を含めた生きものの住処を朗らかに、明るく、楽しくつくっていきたいです」。

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